ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
その様子に気がついて、純もぼんやりとベッドの上に起き上がり、茜が部屋に居て、自分のジーンズと、何かを摘まみ上げて複雑な表情をしている事に気がついた。そして、茜が摘まみ上げている物が何であるかに気がついた時、純は心臓が一瞬止まった様に感じられた。

茜が持って居たのはコンドームの袋だった。

純はそれを思い出して、慌ててベッドから跳ね起きると、素早く茜からそれをかすめ取り、バツの悪そうな表情をしたまま、何処に隠していいのか分からないと言う表情で視線を茜から外す。そして……

「きょ…恭介に貰ったんだ、男が持ってるのがエチケットだって……」

茜は、ちゃめっけたっぷりの表情で純を見詰めながら、ぽつんと一言こう言った。

「お父様に、伝えておくわね」

 くすくす笑いを必死で堪えて茜は横目で純を見ながら、思春期の男の子の何とも言えない、この敗北感と言うか、これから頭が上がらない感に絶望して、ちょっとだけ拗ねて見せる幼さを忘れてしまっていた自分に気がついて、純の若さを少しだけ羨ましいと思った。おして、妙に大人な自分に気がついて少しだけ後ろめたさを感じても見た
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