ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
心配そうな表情で椅子から立ち上がり、扉に向かってゆっくりと歩み寄る純の口調は、巣子日基部しいものが有った。

「大丈夫よ。先生様の原稿取りで散々徹夜させられたわ。それより夜食でも如何?」

そう言って優しく微笑む茜の行為を純は素直に頂戴した。そして二人連れ立って一回のキッチンに向かって降りて行く。

「どうぞ、あんまり大したものは出来ないけど」

そう言って茜は鍋つかみを両手にはめると、ガステーブルの上で、湯気を吹く鍋焼きうどんの鍋を純の前に差し出した。純はダイニングテーブルの椅子に座ると差し出された鍋を見詰めてちょっと嬉しそうにして見せる。

「さっきお父さんにも出したんだけど、あんまり嬉しそうにしてくれないのね。料理は嬉しそうに食べてくれるのが作りがいが有って良いんだけどな」

純の向かい側の席に座って、頬杖をつきながら純を見詰める茜の表情は、ちょっとだけ暗かった。
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