ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

・彼女の風景

学校帰りの電車の中、
純は部活で遅くなる友人達とは別に
一人で帰りの電車に乗り込んだ。
そしてそれ程混んで居ない社内を見渡すと、
隣の車両に一人で座る、
しのぶの姿を発見した。

純は躊躇う事なく隣の車両に移ると、
しのぶの前に立ち
小さな声で彼女の名を呼んだ。

「し、しのぶ……さん…」

その声に気付いたしのぶは
ゆっくりと顔を上げて
純の事を見上げた。

「あら…この前の…えっと
…純君だっけ？」

笑顔で話すしのぶの表情を見て
純はちょっと安心した。

「座らない？」

しのぶに促されて純は彼女の隣に座った。

「へ～え、柏高か。頭いいのね」

詰襟の襟につけられた校章を見て、
しのぶはちょっと感心した口調で
純に向かってそう言った。

「いえ、そんな事は……」

「あら、とっても立派よ。
ちゃんと自慢した方が良いわ
…女の子に対する経験意外はね」

しのぶのきつい一言に純は
涙が溢れそうになった。