ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「あら、騙されてるとは失礼な」

「じゃぁ、何処がいいのさ?」

茜はゆっくりと純に視線を移し、にっこりと微笑みながら、小さな声でこう言った。

「一生騙して手くれそうな気がしたの」

茜はそう言って純の額を自分の額を抑えて居た人差し指で軽くつつくと、ゆっくりと立ち上がり静かに純の部屋を出て行った。

「一生騙してくれそう……ねぇ…」

鍋焼きうどんの湯気の向こうに茜の微笑みが映り込んで見えた気がした。それは、深夜の不思議なテンションが見せる幻の様だった。
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