ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「――ん、いや、なんだろう……」

「莫迦だな、こう言う時はラブレターって相場が決まってるだろうが」

「ラブレター?」

純にとってそれは初めての経験だった。彼女が握りしめていたからだろうか、手紙には少し手のぬくもりが残っている様にも感じられた。携帯のメールでは無い、磁器質の手紙。それは、彼女が純に自分の気持ちを伝える為の最終手段だったのかもしれない。

「よっ、持てる男はつらいねぇ」

悪友達の冷やかしに包まれながら、純達はゆっくりと踏切を横切って行く。

「――ば、莫迦言うなよ…」

こう言う時の照れ隠しと言うのは、どうすればカッコ良く見えるのだろうか等と余計な事を考えながら純は皆と一緒に学校へと向かった。
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