ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
故意に待たせている訳ではない、行くと約束した訳でもない。第一に自分は彼女の顔どころか名前すら何て言うのかさえ知らないのだ。その事に改めて気がついてポケットの中で少しよれた手紙を引っ張り出すと差し出し人の名前を確認した。
「西川貴子……」
その名前に聞き覚えは無かった。
おそらく初対面の相手だと思われた。そして純の脳裏に今朝の揺れるポニーテールが思い浮かぶ。顔は確認出来なかったが、ちょっと小柄で快活そうな後姿。それがやけに印象深くて、純は一人車窓の景色を見詰めながら、ほっとひとつ溜息をついた。
★
学校の門に辿り着いた頃には夕日が少し傾きかけ、校舎の影がグラウンドに長く伸びて居た。純は急いで裏庭に向かって校舎を迂回しながら走り出す。常識的に考えて見て、その西川という女の子が律儀に待っているとは思えなかったが、手紙を受け取った以上は返事をする義務が有る様な気がしてここまで来たのだった。
「西川貴子……」
その名前に聞き覚えは無かった。
おそらく初対面の相手だと思われた。そして純の脳裏に今朝の揺れるポニーテールが思い浮かぶ。顔は確認出来なかったが、ちょっと小柄で快活そうな後姿。それがやけに印象深くて、純は一人車窓の景色を見詰めながら、ほっとひとつ溜息をついた。
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学校の門に辿り着いた頃には夕日が少し傾きかけ、校舎の影がグラウンドに長く伸びて居た。純は急いで裏庭に向かって校舎を迂回しながら走り出す。常識的に考えて見て、その西川という女の子が律儀に待っているとは思えなかったが、手紙を受け取った以上は返事をする義務が有る様な気がしてここまで来たのだった。