ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

今の純に出せる結論はそこまでだった。何も知らない女性に対して、早急に好きだ嫌いだと言う安易な結論を出す事は出来ない筈だと思ったからだ。安易な返事は、きっと彼女を苦しめたり傷つけたりするだろう。それに、あまりにも短時間で接近する男女関係に愛する警戒心も有った。

夕日は既に西に傾き、あたりは薄い闇に覆われ始め、昼はゆっくりと次の日までの短い時間を過ごすのだ。

　　　　　　　　　　★

「ナルホドね。賢明な返事だと思うわ」

夕食の食卓で純はさっきの出来事を茜に話して意見を求めた。その答えがこれだったのだ。

「でもね、純君、ちょっと優等生過ぎる様な気がするな。思春期の女の子のには第六感が有るのよ。インスピレーションだけで好きにもなれるし嫌いにもなれる」

純は茜の瞳を見詰めながら、ちょっと不満そうな表情で

「でも、知らないんだから仕方ないじゃないか」

そう言って、少し拗ねて見せる。その仕草が子供っぽくて、そして、自分が失ってしまった思春期の感受性を思い出し、茜は少し微笑んで見せた。