ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「――あ、あれは、ちょっと緊張
しちゃっただけで、いつもは……」

そこまで聞いたしのぶの
くすくす笑いは、
純の心をざっくりとえぐる

「そうね、分ってますよ、今度はちゃんと
出来ると良いね…それに」

そこまで言ったしのぶの表情が
ちょっと曇る。

「大切な初体験を見ず知らずの
風俗嬢ですまそうなんて言うのは、
…ちょっと感心しないな、
悪いけど、私の趣味じゃない」

そう言って微笑むしのぶの表情は
純の行動を少し憂いている様にも見えた。

「――そ、そうですよね」

純は短くそう答えるのが精一杯だった。

「一生に一度の感動なんだから、
ちゃんと恋をしてからお互いの事を
良く知った上でセックスするのが
大事な事だと思うよ」

真顔のしのぶに純は
何も言う事が出来なかった。
大人の女性の表情は意外に心に
突き刺さる…一生に一度の感動

…それはひょっとしたら、
しのぶの後悔だったのかも知れないと
純は思った。
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