ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「あ、う、うん……」

ちょっと曖昧な返事を返すと、それでも嬉しそうな表情を作って貴子は純の横に来て、純を促す様にして歩き始めた。そして貴子は何かを思い出した様に純に向かってこう切り出した。

「え……と、純君で、良いですか?」

貴子の不意の質問の意味が一瞬理解出来なくて純はちょっと戸惑った表情を見せる。
「お友達から始めるんですよね。だったら、呼び方を決めておいた方が良いかなと思うんですけど」

笑顔で話す貴子の顔を見詰めて、純はようやく彼女の質問の意味を理解した。

「――う、ん、それでいいや。君の事は西川さんで良いかな?」

純の返事に貴子は森の小動物の様な笑顔を返すとキュートに小さく頷いて見せた。
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