ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語

・恋人と呼べる

お互いの事を良く知ることから、友達関係は始まるのだろうか。純と貴子は電車の中でぎこちない会話を続けた。

とぎれとぎれにかわされる会話は、二人にとって、新鮮なものだった。

異性と、ちょっと込み言った話をするのはお互い初めてだった。

その物珍しさも有ってか、うまく続かない会話すら楽しむ事が出来る様に思えた。

純と貴子が降りる駅は偶然にも同じ駅だった。

駅を出て駅前の商店街に出て少し歩いてから、三差路のスクランブル交差点で
ちょっと名残惜しそうに二人は分れた。


純は自分の帰宅路と逆方向に歩いて行く貴子の後姿が人混みに紛れて見えなくなるまで見送ってから、自分も帰るべき道に向かってゆっくりと振り向いた。


そして純の目に飛び込んできた光景に…軽い眩暈と脱力感を感じた。
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