ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
別に悪い事でも後ろめたい事でも無い筈で有るのだが、何か言い訳をしなければならない、何故かは分らないのだがそう思えて心が千々に乱れ同時に嫌な汗が額に浮き出すのを感じた。

「と、友達だよ、別に茜さんが思ってる様な関係じゃ無いからね…」

ちょっとふてくされた表情で、そっぽを向いて呟く様に言う純の姿が茜には少し羨ましくも思えた。

自分が失ってしまった思春期の「感性」が純の中で順調に育っている。

少年と大人の狭間で揺らめく心、眩しい季節の真っただ中に居る純の事がとても羨ましくも思えたのだ。

だからちょっと意地悪してみたい、ちょっと茶化して見たいと言う悪戯心が茜の心にふつふつと沸いて出たのだ。

そしてその行動は純と自分の親子としての距離をも縮めてくれる様に思えたのだ。

「今の処は……でしょぉ?」

茜はそう言ってから純の手を取ってゆっくりと歩き始めた。純もそれに引きずられる様に歩き始める。
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