ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
そして、工場の入り口を入って店の中央に置かれたバイクの姿が純の心に突き刺さる。


『DUCATI モンスター400』


イタリアの太陽の色をした真紅の車体は見る者を一目で魅了する。純はその車体を見て、思わずごくりと唾を飲む。

「やあ、こんにちは、え~と、純君だっけ?」

バイクの陰から整備の手を休めて顔を出した若い店員は笑顔で純にそう言うと、ゆっくり立ち上がって、にっこりと微笑んで見せた。

「あ、はい、こんにちは…」

純もそれにつられて反射的に返事をする。

「どうだ、純、見たかこれ!」

工場の中に保の声が響く。

「どうだって…うん、良いと思うけど…」

「だろう、ホントは大型車が良かったんだけど高校生は普通二輪しか取れないからな」

その保の言葉に純は一瞬考え込む。更に彼の顔をじっと見詰める。
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