ヰタ・セクスアリス(vita sexualis)物語
「外車や旧車ってのは押し並べて妙な癖が有るもんだ。それに比べて日本車は良く出来てる、経験値を上げるんなら、そっちの方が都合が良い…悪い事は言わん、今からでももう一度考え直してみないか?」

「…な、なんすか店長、俺がへまやって怪我でもするって思ってるんすか?」

保は店主に向かって振り向くと腰に手を当てて仁王立ち少し口を尖らせながら不満そう無表情…

「変なもん薦めちまったこっちの責任も有る。違約金だの何だの細かい事は言わん、だから…」

ごつい外見から想像が出来ないくらい肩をすぼめて背中を丸め、保に向かって
真剣な表情で店主はそう言ったが保は全くその意見を聴く気配は無かった。

「だいじょうぶすよ。結局は普通二輪車じゃないすか。リッターマシンなら考えるかも知れないけど、問題無いっすよ」

お気楽に答える保の姿を見ながら店主は小さく一つため息をついた。そして若い店員に向かって首を傾げて見せてから、ゆっくりと店の表に向かって出て行った。

「まったく、ホントに心配性なおやじだな…」

保は不満そうな表情を更に曇らせてぽつんとそう呟くと再びバイクに向かって振り向いて瞳をキラキラと輝かせる。


「なぁ、保…」


純が保に向かって腫れものに触れる様な口調で呼びかける。その表情から、保は純が何を言いたいのか察した様で純を見詰めながら肩をすくめて視線を落とし、少しふてくされた表情で純に向かってこう言った。

「はいはい、純君の友情は身に染みて感じさせていただきましたよ。でもな、バイク、イコール、危ない乗り物って決めつける方がどうかしてる。その考えだけは捨ててくれよ」

それを聞いて純は曖昧な返事をする。

「…ん、あぁ…うん、わかったよ」
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