空しか、見えない
「もしもし。おう、遅えよ。え、まじ? あ、そう」

 環が電話を耳に当てている。相手は千夏なのだろうが、環の声のトーンが落ちていくのが不思議だった。何かがあったのだろうか。

「とりあえず、車に乗ってようか?」

 純一が、ドアを開けてくれる。
 環は車内に向かって、ちょっと待っててとばかりに手を上げて、自分は雨にあたったまま、話し続けている。
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