空しか、見えない
 車の窓が閉まり、ヒーターの温風が車内に回る。
 急に、体が冷えてきた。後ろで女子3人が小刻みに震え、もう冬なのだと実感させられる。
 通話を終えた環が、慌てて助手席に乗り込んできた。純一が、のせてあったタオルを彼に手渡す。

「サンキュ」

 頭とダウンジャケットの表面を拭いながら、環は言う。
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