空しか、見えない
 フーちゃんやマリカのように、とても急ぎ足にはなれなかった。

「大丈夫? サセ」

 横を歩く環が、またそっと声をかけてきた。

「大丈夫だけど、なんだよあのふたりって思っちゃってるのは、確か」

「まあ、そう言うな」

 長身の環が、佐千子の肩をぽんと叩く。そっと包まれたように、優しさが胸に染みる。
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