空しか、見えない
 それぞれ雨を含んだコートを、ハンガーにかけていく。窓の桟にずらりと干す。暖房の入った部屋の窓ガラスは、それだけで水蒸気で曇り始めた。

「海岸へは、もう行ったの?」

 のぞむが純一に訊ねる。
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