空しか、見えない
「パティシエの資格を取りたいな、と思って。元々、お菓子が好きだったし、いつかお母さんになってもお菓子を作れるのはいいなと思うし。ただね、そこ元々フランス料理の学校で、受講料が高いの。高すぎ。鍋とか道具とかも一式、最初に揃えるしね。三日坊主にならないように、がんばってる」

「トップバッター秋本千夏、いい報告じゃん」

 と、環。

「あのね、高い方が続くらしいよ。元を取らなきゃって」

 きらきらした爪の先を、マリカがそう言いながらぎゅうっと握る。
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