空しか、見えない
「これから、かけてみる」

 佐千子はそう言って通話を切ろうとし、ふと訊ねた。

「千夏、最後に訊いていい? 義朝のいた海って、どこなの?」

 電話口の千夏が、黙ってしまった。それから小さくため息をついた。

「それがさ、あいつ、ばかなんだよ。岩井海岸だったって。なんでって? 私も思わずお母さんに訊きそうになった」

「なんで?」

 佐千子も思わず言葉をなぞっていた。
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