空しか、見えない
 深夜の電話の呼び出し音は、かけている方の部屋にも音が響く。
 寝起きの声だったフーちゃんは、一瞬言葉を失い、やはりすぐに泣きじゃくった。
 けれどその海の名を聞いた後は、彼女は泣くのをやめた。自分にも何かできないかと訊ねてきた。
 環は電話に出ず、純一と話している最中にコールバックがあった。3人でキャッチホンで話しているの自体が、まるであの頃のようだった。
 ふたりも、亡くなった場所を最後に聞いて、やはり黙ってしまった。
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