空しか、見えない
もちろん、覚えている。忘れるはずがない。でもその頃から少しずつふたりの心が離れていったのだ。そして、のぞむは何の相談もなしに、渡米を決めた。相談さえしてくれずに、ただ一方的に、「決まった」とまるで他人事のように報告され、そのまま今日まで話の続編は何ひとつなかった。向こうの住まいを知らせてくるわけでもない。電話もしてこない。黙って、理由も告げられずに、佐千子の前から消えたままだった。