空しか、見えない
 佐千子は、まだ眠かったわけではないが、それ以上、のぞむと密室で過ごしていると、妙な緊張で酸欠に陥りそうだった。さっきみたいに、ふたりきりになるのも、ごめんだった。だから、黙って千夏の横の布団に入り、丸まった。
 千夏の背中がぽかぽかとして、髪からはシャンプーの匂いがした。すでに寝ているらしくて、小さな寝息も聞こえてきた。
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