空しか、見えない
「サセ」

 誰かが自分を呼んでいる。夢の中だろうか。けれどその声は、やがて囁くようではなく、しだいに大声になった。

「サセ、起きろ。雨が上がった!」

 盛大に襖まで開いて、寝ていた千夏とマリカも起きた。フーちゃんは、男部屋で環とまだ飲んでいたらしい。純一も起きた。
< 284 / 700 >

この作品をシェア

pagetop