空しか、見えない
【AM 1:53】
〈じゃあ、本当におやすみ。また、連絡するね〉

 気まぐれな、のぞむからの短いメール。深夜に続いた、そんな短いメールのやり取りは、佐千子にまだのぞむと付き合っていた当時を簡単に思い起こさせた。
 大抵はどちらかが眠るまで続いた、甘ったるくて、意味のないようなやり取り。だから、結局、ふたりはどこへもたどりつけなかったのかもしれない。ふたりの間には、ひとかけらの理解も残らなかった。佐千子はあの頃結局のぞむが何を考えているのか、まるでわかっていなかった。彼の留学の意志さえ、知らず終いだったのだから。
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