空しか、見えない
「もう、いいよ、のぞむ」
今度は力なくそう呟くと、携帯電話を枕元に置いて佐千子は毛布をかぶり目を閉じた。
どこか微熱に浮かれているようで、それでいてひどく満ち足りた安らぎがあった。大体、眠るのも忘れて飲んで騒いだのは、大人になってからははじめてだった。
「もう一度、遠泳しない? このメンバーで」
みんなとの別れ際、なぜいきなり自分があんなことを切り出してしまったのか、佐千子はおぼろげに記憶をたぐり寄せてみる。
ふいに、口をついてしまっていたのだ。あの夏のきらめきを、思い出して。
今度は力なくそう呟くと、携帯電話を枕元に置いて佐千子は毛布をかぶり目を閉じた。
どこか微熱に浮かれているようで、それでいてひどく満ち足りた安らぎがあった。大体、眠るのも忘れて飲んで騒いだのは、大人になってからははじめてだった。
「もう一度、遠泳しない? このメンバーで」
みんなとの別れ際、なぜいきなり自分があんなことを切り出してしまったのか、佐千子はおぼろげに記憶をたぐり寄せてみる。
ふいに、口をついてしまっていたのだ。あの夏のきらめきを、思い出して。