空しか、見えない
 ニューヨークのアパートメントで、昼間の時刻に義朝の報告を電話で受けたとき、彼は夜勤明けで帰宅したばかりで寝入りばなの時刻だった。
 電話の音で同居人のルーの息子が目を覚まし、ぐずり始めた。
 ベッドルームがふたつと小さなリビングルームひとつの住まいだ。そこをルームシェアしているわけだから、生活音は当然のごとく、互いに響き合う。ルーは、のぞむの深夜の足音や、洗濯の音に平気で文句を言うが、のぞむは赤ん坊の泣き声を煩いとは言えない。
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