空しか、見えない
「私、いつダイエットなんて言いました?」

 吉本がいるとわかっていたら別の時間にやってきたものを、ちょうど水泳クラブの練習中にぶつかってしまったようだ。

「それは、失礼しました」

 大声で、頭を掻いている。真っ赤な顔をしているから、同僚を傷つけたら照れるくらいのデリカシーはあるようだ。

「クラブの練習が終わった後に、また来た方がいいみたいですね」

「いや、いいんじゃないですか? よかったら、一緒にどうぞ。先生にも今年は遠泳の補助に入ってもらえたらいいなあ」

 吉本は、にんまり笑う。
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