空しか、見えない
「そうそう、その遠泳なんですよ。同期の仲間たちとこの夏、久しぶりに遠泳やろうって話が出ていて」

「渡辺先生は、ここのOGでしたもんね。Old Girl、略してOG」

 芙佐絵は呆れてしまい、返事もせずに、水の中に飛び込んだ。まったく、なんて失礼な男なんだろう。
 端のレーンを泳ぎ始めると、懐かしい水の感覚に包まれた。体が浮いて、水をぐんぐんと掻き前へ進んでいく。だがそれははじめの往復くらいで、やがてすぐに息があがった。
 二の腕に疲労が宿るのを感じるほどだった。
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