空しか、見えない
「あの」

 そう言って、芙佐絵は笑いを堪える。

「そのゴーグル、顔に対して小さすぎるみたいですよ。寄り目になってますから」

 少し仕返しをする。

「ええ?」

 そう言ってゴーグルを外し、

「これは、子ども用だな。おかしいな、俺のはどこだ?」

 吉本はそう言うと、プールから上がっていった。

「先生」

「なんでしょうか?」

 普通の近視用眼鏡をつけて、吉本は戻ってきた。
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