空しか、見えない
 黒の競泳用水着をつけた環は、会社近くのジムのプールで泳いでいた。日頃から、週に二度は泳いでいるので、後は少し距離を伸ばしていけば遠泳もできるはずだった。
 環が今日どうしても泳ぎたかったのは、遠泳のためというよりは、サセへの思いに悶々としてしまうからだ。
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