空しか、見えない
 水面に顔をあげて、息継ぎをする。まだまだ、自分なら泳げる。
 力強く、水を掻く。
 だけどサセの奴は、もうずっとのぞむが好きなんだよな。一度もふらふらすることもなく、ずっとあんな奴を待ってる。だから、余計に愛おしいのかな、と環は思いながら、水を掻いていく。
 夏にはせめて、全力でサセを支えてやりたいと思った。思いは通じなくても、サセが恥ずかしそうに口にした、“みんなで遠泳”という望みだけは、何があっても叶えてやりたい。
 環は、水の上で仰向けになると、じっと天井を見上げた。
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