空しか、見えない
 「力みすぎだって」と言うのぞむの言葉は自分に向けられたのではなかったはずだが、後々、佐千子の胸に突き刺さって取れなくなった。
 のぞむと付き合いはじめてからは余計に、その言葉がつきまとった。
 高校までは毎日会っていたから、大学で離ればなれになったとき、急にできてしまった距離にとまどったのもある。
 夜になると、それまでと同じように、他愛のない話がしたくなった。他愛のない話で毎日をキャッチボールしながら進んでいくのが自分たちふたりなのだと思っていたから。
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