空しか、見えない
「ボンジュール、ムッシュウ。今日のプールは何時からかしら」

 窓辺に向かって、マリカは電話をかける。

「朝は11時からになりますよ、マドモアゼル」

「ダコ、後でうかがいます」

 航空会社の契約するスポーツジムは、セーヌの右岸にある。左岸にある住まいからあまり近くもないし、まだ一度も通っていなかった。同僚たちと、オフの日にまで顔を合わせるのも面倒だと思っていたけれど、マリカには目標ができたのだ。
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