空しか、見えない
 JFKの国際空港に到着するなり、のぞむは担架にのせられ、そのまま救急で病院に搬送された。
 ただの寝不足か過労かと思っていたが、機内で腹痛が始まり、脂汗が流れ始めた。乗客のいた日本人の医師が、急性膵炎の疑いを指摘し、到着前に機内から救急搬送の準備が指示された。
 そんなばかなと、のぞむは思う。
 これから急いで帰宅して、シャワーをあびて身支度したら、今日のうちにも仕事に出るつもりだったのだ。これ以上休んだら、クビになるのがオチだ。

「No need,自分で病院へ行ける」

 担架の上でそう口にしかけた矢先に、また腹痛が激しくなり、のぞむは意識を失いかける。
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