空しか、見えない
「のぞむ? Don’t talk.無理して話しちゃだめ。大体、寝言なんて、何も言ってなかったよ。ただずいぶん汗をかいて、苦しんでいただけ」

「どうしてルーは、ここにいるの?」

 ルーは、椅子に座り覗き込んでくる。

「なあ、どうして、ここがわかったのさ?……、Rue,Tell me why?」

「Because,のぞむのことなら、なんだってわかるからね」

 ルーはそう言うと、肩を竦めて笑った。ほとんど化粧もしていない顔に、ひっつめ髪だ。耳にも、指輪と同じ、金色のピアスをぶら下げている。いつだったか訊いたら、どちらも中国を出るときに身につけてきたものだそうだ。何かとても困るときが来たら、それを処分して、自分は生き延びるんだと、真顔で話したルーは、のぞむより年上なのに少し可愛かった。
< 405 / 700 >

この作品をシェア

pagetop