空しか、見えない
「It’s joking,Nozomu.私たち、昨日JFKへ行ったからね。昨日が帰国だって、訊いていたでしょ? だから迎えに行った。そうしたらいつまでもゲートから出てこなくて、係の人に訊いたよ。のぞむが救急車で運ばれたのを知ったの」

「ふーん、そうか」

 のぞむののんびりした反応に、ルーは眉間に皺を寄せ、少し膨れっ面をした。

「それで、日本はどうだったの? のぞむ。友達には、会えたの? We,私たちは、のぞむがもう帰らないような気がして、とても心配してたよ。だけど、No way,今はやっぱり話しちゃいけない」

 質問したはずなのに話してはいけないなんて言うルーが、のぞむには可笑しかった。

「We?  へえ、ルー今、We私たちって言ったね。そうか、こいつもひとりに勘定されるようになったか」

 病床から子どもに向かって人差し指を伸ばしてやると、小さな手が握り返してくる。湿ったような温かい手だ。少し振ってやると、喜んで声をあげる。
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