空しか、見えない
 彼の生まれついての足の障害だが、今の治療技術を持ってすれば、治らなくもないと医師からは伝えられているそうだ。ただ、結構な費用はかかる。
 子どもが生まれてもうじき1年になる。
 この先、ルーがどうするつもりなのか、のぞむはまだ訊いていない。ルーの選択肢には何があるのかも、訊いていない。ただ、毎日赤ん坊の世話で必死に生きているように見えていた。他に何を贅沢するわけでもなく、毎日髪の毛を振り乱して赤ん坊の世話をしているルーが、のぞむのニューヨークでの、たったひとりの仲間だった。
 真っ白な壁の病室で眺める親子は、いつもと違う場所にいるからか、それとも離れていた時間のせいなのか、少し余裕ができたように映った。
< 407 / 700 >

この作品をシェア

pagetop