空しか、見えない
 扉がノックされて、白衣を着たドクターが入室する。

「Nice to meet you.」

 自己紹介をしながら、ドクターが握手の手を伸ばす。
 ルーたちは、壁際の椅子の方へ身を移す。

「君の家族?」

 返事に少し戸惑って、いいえ、と小さく頭を振る。

「そう。早速だけれど、少し状況を説明しよう。君が眠っている間に、血液、尿、CTの検査は済んで、結果も出ている。急性膵炎を発症している。重症度で言うと、6あたり。膵炎は、発症から48時間以内が分かれ目になる。重症度が8以上になると、一気にショック症状や多臓器不全に陥るリスクがあがり、致死率も高くなる。今の状況だって決して侮れないが、その最悪の状態の手前であったのは、ラッキーだったと思った方がいいよ。ガイドラインに従って、絶食、絶飲、絶対安静状態による投薬で、まず1週間は様子を見る。後のことは、もう一度検査をして決めるしかない、そんなところだ」
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