空しか、見えない
 深々としたため息が、電話口の向こうから聞こえてきた。

「わかったよ、のぞむ。だけど、悪いが、退院しても、またお前を使えるかどうかの保証はできないぜ。気の毒だけど、それはわかるよな」

「I see」

 ようやく見つけた仕事だったのに。他は幾ら面接を受けても、落とされてばかりだった。英語も下手だし、仕事に就かないと、上達するチャンスもない。自分を信用し、保証してくれる人もなかった。ルーに紹介されたこの仕事で、のぞむはニューヨークで「採用する」と言われたのだ。
 だけど、いや、だからって今はどうしようもないよ。情けないよな、義朝。サチに偉ぶっちまったからバチでも当たったのかなと、通話の切れたままの受話器の音を耳にしながら、のぞむは苦笑した。
< 414 / 700 >

この作品をシェア

pagetop