空しか、見えない
「そうだ。ルー、悪いんだけど、俺のジャンパーのポケットから、iPhoneを取ってほしいんだ」

 ルーが探している間、代わりに赤ん坊を受け取って、枕元に座らせた。機内モードのままになっているはずのiPhoneを手にした。
 このままでは家賃だって、すぐに払えなくなるのは、ルーなら言わなくても、わかるだろう。いや、うやむやにしてはだめだ。きちんと話すべきだ。
 不安気な表情で渡されたiPhoneを手にして、のぞむはふたつのことをルーに伝えた。

「ルー、悪いけど、ちゃんと聞いて。ひとつは、ここの入院費や治療代を払ったら俺、あとどれだけ金が続くのかもわからない。情けないけど、アパートメントの家賃が、払えるのかもわからないんだ。だからルーたちは、誰か友達のところにでも、引っ越ししなくちゃいけなくなるかもしれないよ」

 彼女は目に涙を浮かべて、じっとこちらを見ていた。
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