空しか、見えない
「それからもうひとつは、頼み事だ。今から、メールを打つから、外に出たら送信だけしてほしんだ」

「あなたの、日本の友達に?」

 のぞむは、頷いた。

「そう、みんなで新聞なんて作ってるからさ。俺だけ、欠けていたら、やっぱ寂しくてね」

「Newspaper?」

「そう。そういうの好きな奴って、時々いるじゃん」

 のぞむはそう言うと、サチを思い出して笑った。

「OK!」

 ルーの返事を聞き、のぞむは日本語を打ち始める。腕に点滴をつながれているからか、仰向けだからなのか、手に力が入らない。廊下を歩くナースやドクターが、今にも扉を開けそうで、のぞむは気がはやる。
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