空しか、見えない
 でも、もう一度バディは結成されたのだ。皆で一つになって、あの懐かしい海を泳ぐと決めたのだ。しかも、それを言い出したのは、自分なのだ。のぞむには批判されたけど、みんなが、ふたたびそれぞれの場所で泳ぎ始めたのだ。
 フーちゃんは学校で、マリカはフランスで、環はすでに長距離を泳ぎ、今度もまた先頭を切って泳ごうとしているようだ。
 佐千子には、また仲間ができた。そんな気がした。また懐かしい、あの輪が帰ってきた。その輪の中心には、義朝がいる。
 ひとつになって、遠い岸まで泳ぎきった仲間たちとのかけがえのない時間が帰ってきたのだ。
 この夏に向けて、時間が輝き始めた気がしていた。
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