空しか、見えない
「まったく、のぞむってどうしてこう手がかかるんだろう。それで、サセ、あんたはどうしたいの?」

 千夏の大きな目に見つめられ、佐千子は改めて首を横に振る。

「わからないの」

「わからないって、あんたらしくもないわね」

「そう、本当に自分らしくないことばかりしてる。新聞なんか再び始めたり、遠泳をするのも、のぞむには、らしくないって、こっぴどく言われたわ」

「あいつに何が言えるっていうのよ、偉そうに」

 千夏は、少しビールが回ったみたいにそう言った。けれど、どこか朗らかなのは、やはりこうして仲間たちと過ごしているからなのか、久しぶりに泳いだ後だからなのか。
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