空しか、見えない
 つい、じろじろ眺めてしまうが、そんな視線にだって慣れっこだという風だ。
 見てろよー、と、佐千子は思った。
 久しぶりに嗅ぐプールの匂い、水飛沫の音、やって来ると俄然、闘志が沸いてきた。
 不思議だった。
 岩井海岸で海を眺めていた時にも、久しぶりにそう感じていた。
 もうずっと忘れていたような、どこか間抜けなくらい清々しい闘志だった。
 このままでは、嫌なのだ。自分からは、何のアクションもせずに、ただじっとのぞむからの連絡を待ち続けていたような自分では、もう嫌なのだ。ルーからの問いかけにも、うまく答えられないような自分も、心も体もすっかり緩んだ自分も嫌なのだ。
 まだたったの25歳なのだから。
 嫌だ、嫌だ、こんなの嫌だ。
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