空しか、見えない
 中3の夏の、あの厳しかった指導教官の声まで蘇ってくるかのようだ。
 なんだ、最高じゃないか。
 とっても気持ちいいじゃないか。どうしてこれまで泳ぐのを忘れていたのだろう。
 そう思ったのも束の間、すぐに息が上がり始めた。何とか一度ターンはしたが、一往復目で、プールの縁に手を伸ばしてしまった。
 千夏が、レーンの下を潜って、やって来る。
 彼女は、そんなに息が上がっていないみたいだ。
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