空しか、見えない
 友人であっても、環は男だった。女同士の柔らかな感じではなく、ごつごつした大きな体が目の前に聳えているようだった。
 怖いと感じながら、それが嫌ではなかったのは、久しぶりに泳いだりして、体が敏感になっていたからだろうか。そこにある人の放つ熱が、恋しくも感じられた。

「ごめん。だけど、どうしても気になったんだ。サセが、ニューヨークに行ってしまうんじゃないかと思って。さっきもメールをしたんだけど」

「そんなことなの? 環が私をそんなに心配してくれていたなんて、知らなかったよ」

 見上げると、環の黒々とした瞳が輝いていた。瞳が自分の方を見て、揺れていた。まるで、こちらにもあるはずの光をたぐり寄せようとしているようにも見えた。握手でも、ハグでもキスするでもなくて、目と目の光が呼応し始める。
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