空しか、見えない
「可愛いな。鼻が光ってる」

 環の指が自分の方に、伸びてきた。

「だめ、環がそんなことしちゃ」

 サチは、首を横に振る。

「それに、こんな風に急にやって来たりしちゃしちゃ、だめだよ」

 環が、俯いた。

「わかってるさ。だからずっと、俺、一度もこんなこと」

 その声が消え入りそうに掠れ、サチの方から、環の胸に頭を預けてしまった。
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