空しか、見えない
 しばらく目を瞑っているだけで、サチは安堵を覚えた。自分だって、男の人の温もりに飢えていたのだと思った。久しぶりに泳いだりして、体が目覚めてしまったのかもしれない。本当は、ジムの帰りにあのまま誰かに抱かれたかった。知らない人でいいと思った。千夏はインストラクターにもう入れあげ始めているけれど、そういうのではなくて、見も知らぬ人と、束の間結ばれたいと思うような衝動が、泳ぎ終わった後に一瞬わいたのは確かだった。
 今、それを受け止めてくれたのが、環だった。

「ありがとう、環。私、誰かにこうしてほしかったみたい」

 そっと両手で体を押し返した。
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