空しか、見えない
 もう涙は乾いていたが、舌を伸ばすと、頬が塩辛かった。
 洗った顔をタオルで拭い、映った鏡の中の顔に、さきほどその鼻に手を伸ばしてきた環の様子を思い起こしていた。
 のぞむの幸せを、応援したいとサチは思った。そう思ったのは、はじめてだった。
 ただずっと、恨みがましいような気持ちで待ち続けてきた。彼がどうしているのかを考える余裕もなかった。
 ルーは、のぞむを幸せにしてやりたいのだと書いてきた。幸せにしてほしいではなく、坊やと彼女とで、幸せにしてやりたいのだと。
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