空しか、見えない
 自分はこれまで環とはきちんと向き合ってはこなかった。
 環となら、強くなれるのかもしれない。ただ待っていたり、幸せにしてほしいと願うばかりではなく、彼を幸せにしてあげたいと思えるのかもしれない。
 冷たい水を両手にすくい、顔を包む。タオルで拭うと、佐千子はベッドの上に大の字に倒れた。
< 490 / 700 >

この作品をシェア

pagetop